大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第二小法廷 昭和59年(あ)153号 決定 1984年4月25日

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人曽田淳夫、同曽田多賀の上告趣意第一点は、憲法三七条一項違反をいうが、記録を調べても、第一審裁判所の公平を疑わせる証跡はみあたらないから、所論は前提を欠き、同第二点は、憲法三一条、三二条、三七条違反をいうが、その実質は単なる法令違反の主張であり、同第三点のうち、判例違反をいう点は、原判断にそわない事実関係を前提とするものであり、その余は、事実誤認、単なる法令違反の主張であり、同第四点のうち、判例違反をいう点は、第一審判決が同判示第一の一、二、四、五、七、八、一〇ないし一五、一七ないし一九の各供与の所為のすべてを包括して一罪としているものでないことは明らかであるとした原判断は相当であるから、所論は前提を欠き、その余は単なる法令違反の主張であり(なお、右第一審判決判示の各所為は、それぞれ包括して公職選挙法二二一条一項三号(一号)、三項三号と同条一項一号、三項三号に該当するとした原判断は相当である。)、同第五点は、量刑不当の主張であつて、いずれも刑訴法四〇五条の上告理由にあたらない。

よつて、同法四一四条、三八六条一項三号により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。

(木下忠良 盤野宜慶 宮崎梧一 大橋進 牧圭次)

弁護人曽田淳夫、曽田多賀の上告趣意

<前略>

第四点 罪数に関する法令適用の誤りについて

原判決は、控訴趣意書第二点の第二の法令適用の誤りの主張に対し、一審判決を通読すれば「原判示第一の一、二、四、五、七、八、一〇ないし一五、一七ないし一九、の各供与の所為のそれぞれにつき、公職選挙法二二一条一項三号(一号)、三項三号の罪と同条一項一号、三項三号の罪が成立するが、そのそれぞれが包括して各一罪である」としているという。しかし「右所為はいずれも包括して右各条項に該当する」という一審判決を右のように解釈するのは無理がある。原判決のいうとおりであれば一審判決の右「包括して」という表現は不要であり、又これに続く一審判決の「判決第一の三、六、九、一六の各所為はいずれも①同法二二一条一項一号、三項三号に、判示第二、第三の各所為は②同法二二一条一項三号・一号、三項三号にそれぞれ該当する」というくだりに、原判決の論法でいけば同じく包括して各一罪ということになるところ、右①②に「包括して」という表現が欠落しているのも矛盾である(原判決に従えばこの①②に「包括して」が入らなければ一貫しない)。

とすればやはり一審判示は前記所為の全てを包括一罪としたと読むほかはない。これが仙台高判昭二九・一二・六高裁特一・一一・五一七及び東京高判昭二八・三・二七高判特三八・七〇と相反する判断であることは明らかである。<以下、省略>

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例